アダルトチルドレンとは
アダルトチルドレン(Adult Children、略称AC)は、主に機能不全家族で育ったことで、成人後も心理的な影響を受け続けている人々を指す言葉です。もともとアルコール依存症の親を持つ子どもの研究から生まれた概念です。
しかしながら勘違いしてほしくないのは、アダルトチルドレンは「現代病」ではなく、「ようやく言語化された古代からある人間の普遍的な問題」だという事です。
特徴と背景
1. 起源
1970年代にアメリカの心理学者・クラウディア・ブラックらが、アルコール依存症の家庭で育った子どもが大人になっても抱える問題を研究し、提唱しました。後に対象は拡大され、以下のような家庭環境も含まれるようになりました。
- 親がアルコール依存症
- 親の虐待(身体的・精神的・性的)
- 親のネグレクト(育児放棄)
- 親の過干渉や支配的な親
- 共依存的な家族関係
- 精神疾患や依存症のある親
2. アダルトチルドレンの心理的特徴
- 自己評価の低さ:過剰な自己批判や「自分は価値がない」という感覚。
- 境界線の曖昧さ:他人の要求を断れない、または過剰に干渉する。
- 完璧主義:「失敗が許されない」という強迫的な思考。
- 対人関係の困難:親密さを築けなかったり、逆に依存的になったりする。
- 感情の抑制:怒りや悲しみを表現できず、無意識に抑圧する。
3. アダルトチルドレンの行動パターン
- 子どもの頃の役割(「良い子」「仲裁役」「問題児」など)を大人になっても引きずる。
- トラウマの再演(似たような人間関係を繰り返す)。
- アルコール・ギャンブル・過食などの依存傾向が出る場合も。
回復(治療)のプロセス
アダルトチルドレンは「病気」ではなく、適応の結果としての特徴です。
しかし過度な状態では実生活に支障が出る事が多いです。回復には以下のようなアプローチが有効とされています。
- セラピー:トラウマ治療(EMDRなど)、インナーチャイルドワーク。
- 自助グループ:ACOA(Adult Children of Alcoholics & Dysfunctional Families)など。
- 自己受容:過去と向き合い、自分を責める思考パターンを変える。→マインドフルネスに考える。
- 境界線の学習:健全な人間関係の築き方を練習する。
- 薬物療法(補助的に)⇒これに関しては注意が必要です。参考ページ;マインドレスネスの無限ループ!精神科の薬は危険か?
すべての機能不全家庭の子どもがACになるわけではない。 日本では「毒親」という関連概念も注目されています。
参考書籍
『アダルトチルドレンと家族』(クラウディア・ブラック)
『もう一人の自分を大切にする』(ジョン・ブラッドショー)
アダルトチルドレンの自覚は、自分を責めるためではなく、これからの人生を自由に生きるための第一歩です。専門家のサポート等で認識していきながら少しずつ心の傷に向き合うことが大切です。
アダルトチルドレンの歴史
クラウディア・ブラックが1970年代にアルコール依存症の研究からアダルトチルドレンという概念を主張しましたが、概念的には新しくても、問題自体は古代から存在していたはずです。
古い文献にある事例
- 古代の文献にアルコール依存や虐待は文献にも記録されている。(例:ローマ時代の「家父長権」による子ども支配)。しかし「トラウマの心理的影響」という認識はなく、「運命」や「しつけ」と見なされた。
- 19世紀産業革命期の児童労働や貧困家庭の問題が社会問題化。チャールズ・ディケンズの小説(『オリバー・ツイスト』など)に機能不全家族の描写。
- 戦前〜戦中は日本の家制度下での「毒親的支配」は、当時は「当然」とされていた。
なぜ過去は注目されなかったか?
- 精神医学の未発達: PTSDが認知されたのはベトナム戦争後(1980年)。それ以前は「性格の問題」と誤解。
- 家族のタブー化: 「家庭内の問題は外に出さない」という社会的規範が強かった。
- 児童の権利意識の欠如:子どもは「未完成な大人」と見なされ、心的外傷が軽視されていた。
アダルトチルドレンは「現代病」ではなく、「ようやく言語化された古代からある人間の普遍的な問題」です。
最近は毒親というワードも多く取り上げられていますが、毒親は大昔から多くいたはずです。
昔は「当たり前」で泣き寝入りだった虐待やネグレクトが、人権意識の向上・メディアの発達・心理学研究等で「異常」と認知されるようにもなりました。
最初の家族=アダムとイブから家族が生まれましたが、その時から問題が始まっていたのでしょう。まさに人間そのものの問題だと言えます。