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米国債とDES

米投資枠80兆円

日米の関税交渉の結果、日本に課される関税が25%(自動車は27.5%)から15%へと引き下げられる一方、日本は米国に「80兆円(5,500億ドル)の融資」を行うこととなりました。

日本国内では様々な批判が出ています。

ただ普通に考えると、融資であれば元金は返ってくるはずです。そして儲けの内の1割のみ日本側の取り分という事をトランプが述べていました。そうであれば仮に無利息で米国に融資したとしても融資額も返済され、尚且つ融資した事業の儲けの1割が日本に戻ってくる・・・・全く不利な条件でもなく、巷で言われているように日本が米国に一方的に貢いでいるというのも違うのではないかと思っていました。

しかし、どうやらトランプ初め米国政府関係者の話から、融資ではなく投資という事が解ってきました。しかも80兆というとてつもない金額を投資するという事。

破格の80兆円という金額を税金等の国債増刷以外に何処に出どころがあるのか、どこからお金を融通するのか、というのもナゾです。そこで一部の有識者からは、DES(Dept Equity Swap)でファイナンスするのではないかと言われています。

日本以外の確定関税率と対米投資枠

あまりニュースには出ていませんが、日本以外の国も関税交渉と引き換えに対米投資枠を約束されています。これらの国はほぼ西側で在留米軍が駐留している国です。トランプが以前から在留米軍のコスト云々と言っていたのも頷ける所です。そして日本を初めとして西側諸国は米国債も潤沢に保有しています。以下の表に記載しました。

確定関税率対米投資額米国債保有額
UAE10%初期10%14000億ドル(10年計画)108億ドル
サウジアラビア10%初期10%6000億ドル131億ドル
EU15%初期20%6000億ドル1657億ドル
日本15%初期24%5500億ドル1151億ドル
インド27%初期27%5000億ドル220億ドル
韓国15%初期25%3500億ドル132億ドル
カタール10%初期10%1200億ドル10億ドル
バーレーン10%初期10%17億ドル1.3億ドル
台湾20%初期32%未確定(強化誓約)300億ドル

「逆プラザ合意」のような国際協調なのか?

■ここで特筆すべきは、こうした対米投資は日本に限った話ではなく、欧州連合(EU)は6,000億ドル(約88兆円)、韓国は3,500億ドル(約51兆円)の対米投資を、関税引き下げの見返りに実施することです。仮に、これだけの巨額投資を賄うために日本、EU、韓国がドルを為替市場で手当てするようなことがあれば、ドルは対主要通貨で大きく跳ね上がり、かつて国際協調でドルの大幅切り下げを行ったプラザ合意とは真逆の「逆プラザ合意」と言えるでしょう。

■2025年8月現在、日本の外貨準備は約1.3兆ドル、うち、外貨建て証券が約9,831億ドルです。仮に、この8割が米国債で運用されていると仮定すると、約7,860億ドルの米国債が保有されている計算になります。このため、もし政府が5,500億ドルの資金拠出を受けるなら、日本政府は外貨準備で保有する米国債の約7割を売却(=DES株式化)する必要に迫られます。

DES(Dept Equity Swap)とは

デット・エクイティ・スワップ(Debt-Equity Swap、略してDES)とは、企業の債務(借金)を株式に変換することで、債務を減らしつつ資本を増やす再編手法です。主に財務危機に陮っている企業が、債権者(銀行や債券保有者)と合意して行います。

簡単な仕組み

  1. 企業が銀行から 1億円の借金 をしている。返済が難しくなった。
  2. 銀行と合意し、その 1億円の債務を株式に変換。
  3. 結果
    1. → 企業の 負債が1億円減る
    2. → 銀行は 企業の株式(出資分)1億円分 を取得

例:A社(架空の企業)

  1. 状況(危機前)∶総資産10億円・負債8億円(銀行借入)・純資産2億円
  2. 債務超過寸前(負債が多すぎる)
  3. 銀行が提案
    • 「8億円の借金を返さなくていい。ただし、その代わりにA社の新株を8億円分発行して銀行に渡す」→DES契約
    • スワップ実行後
      • 負債:8億円 → 0円
      • 純資産:2億円 + 8億円(新株発行)= 10億円
    • 銀行はA社の 株式の80% を保有(=経営権も移る可能性)

メリット・デメリット

企業側

  • メリット∶債務が減り、倒産回避。財務が健全化。
  • デメリット∶株式が希薄化(既存株主の持ち分が減る)

銀行側

  • メリット∶貸倒れリスクが減る。株価上昇で利益の可能性。
  • デメリット∶株式価値が下がるリスクあり

既存株主

  • メリット∶会社が存続する可能性が高まる
  • デメリット∶持ち分が大幅に減る(例:20%→4%に)

実際の事例(日本)

日本航空(JAL)の再建(2010年)

  •  巨額債務を整理する過程で、一部債権が株式に変換された(DESの一種)。
  • 企業再生支援機構が主導し、銀行債権の一部を株式化。

シャープの負債処理

  • 2016年、みずほ・三菱UFJ銀行が保有する約2,000億円の優先株・劣後債を普通株式に変換するDESを実施。
  • 負債を削減して債務超過を回避し、鴻海精密工業による3,888億円の出資を受け入れ、経営権を移譲して再建を果たした。(DESを介した企業買収も多い)

簡単に言うと「借金を株式でチャラにする」 のがデット・エクイティ・スワップ。会社は生き残り、銀行は「債権者」から「株主」に変わります。→今回の例では、「債権者」が日本国、「債務者」が米国、そして米国債を株式に換えて負債を回避するという事になります。

デット・エクイティ・スワップ(DES)で債券が株式と交換された後、その債券は市場で売られる訳でなく単純に「消滅」します。つまり、帳簿上・実物上ともに「債券としての存在がなくなる」処理をします。DESは契約なので、債券を市場で売る事はしないで、単純に取り交わした契約通りにスワップして債券を消却します。

債券の消却とは?

  • 物理的証券がある場合(紙の社債券など)➡ 企業が回収し、破棄・焼却・無効化し再利用不可にする
  • 電子登録の場合(現在は主流)➡日本では社債要項に基づき、日本証券保管振替機構(JASDEC)で登録抹消し、債券の「登録記録」が削除される

どちらの場合も、「その債券は二度と市場に出ない」=完全消滅となります。

米国の思惑

DES契約で米国債である負債を消しさる事により、膨れ上がった米国の借金、負債である米国債を消滅させたい思惑がある事は間違いないでしょう。そして西側諸国にこれ程の取引を呑ませる米国の強制力はとてつもないものです。軍事力なのかスキャンダルなのか、それとも国家を超えたズブズブの関係性なのか、国の政治家どうしでそれぞれの自国民を食い物にしている図式が想像できます。

日本の今後

経済的には紙幣のステープル化(※下記記事参照)でインフレが進み、今回の対米投資枠で将来的には更に円売ドル買が凄い勢いで進む可能性は高いでしょう。そして究極的には交渉カードにも使える米国債を自ら消滅させ、安全資産である米国債80兆円という大金を、株式というリスク高の資産に換えてしまう影響は計り知れないものがあるでしょう。

国債のステープル化

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対米投資枠に関しては、ニュースで報道されているようにデータセンター建設によるAI投資がメインであると思います。日本をはじめとして主に中東で計画が進められています。データセンターは電力がとんでもなく必要なため、石油のある中東での計画がさかんです。日本も原発再稼働の計画がありますが、データセンター計画とセットで計画されているのでしょう。ただ中東や日本での開発なので対米投資ではないのですが、そこで9割+1割のトランプの発言を思い出してみると、SPAC上場させたような米国の会社が日本国内で投資する方法で行うと考えられます。

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