ダブルバインド(二重拘束)とは?
ダブルバインド(Double Bind)とは、矛盾したメッセージによって相手を心理的に追い詰めるコミュニケーションのパターンです。
「どう行動しても否定される」状況を作り出し、特に家族関係や権力差のある関係(親子・上司部下・パートナー間)で見られます。
1. ダブルバインドの特徴
(1) 矛盾した2つのメッセージが同時に伝わる
- 例
- 言葉と態度が正反対
- 「好きだよ」と言いながら冷たい態度を取る。
- 「何でも話して」と言っておきながら、話すと「そんなこと気にするな」と否定する。
- 禁止と要求の同時命令
- 「自立しろ」と言いつつ、何かを決めると「なぜ相談しない?」と怒る。
(2) 逃げ場がない
- どちらを選んでも否定され、「自分が悪い」と思い込ませる。
- 例
- 母親が子どもに「もっと甘えなさい」と言いながら、甘えると「重い」と拒絶する。
(3) 長期化すると深刻な心理的影響を与える
- 特に子どもが繰り返しダブルバインドにさらされると、 → 自己否定・対人不安・統合失調症的な思考の混乱を引き起こす可能性が指摘されています。
2. ダブルバインドの具体例
【家族編】
1. 親が子どもに
- 「勉強しろ」と言うが、勉強すると「外で遊ばないと不健康だ」と責める。
- 「正直に話して」と促し、本音を言うと「そんなひどいことを考えるなんて」と叱る。
2. パートナー間
- 「何でも言って」と言いながら、嫉妬や不安を伝えると「うるさい」と拒絶する。
- 「自由にしていいよ」と言いつつ、連絡がないと「無関心だ」と不満を漏らす。
【職場編】
上司が部下に
- 「自分で考えて動け」と言うが、指示通りでないと「報告しろ」と怒る。
- 「残業するな」と言いながら、定時で帰ると「やる気あるのか?」と非難する。
3. ダブルバインドが生まれる背景
(1) 親(または権力者)の心理的要因
- 不安や矛盾した感情を隠すため
- 無意識レベルでは劣等感の塊だが、上下関係の中ではマウントをとろうとする
- 例
- 子どもに依存したいが「甘えさせるのは悪」と思い、拒絶と要求を繰り返す。
- 無自覚な支配欲求
- 相手をコントロールしたいが、直接的な命令を避けるため曖昧なメッセージを使う。
(2) 機能不全家族(Dysfunctional Family)の特徴
- アルコール依存症の親・共依存関係などでよく見られる。
- 「問題の本質(例:親の依存症)から目をそらすため」に、子どもがターゲットにされる。
4. ダブルバインドの影響
| 短期的影響 | 長期的影響 |
| 混乱・自己不信 | 低自己肯定感 |
| ストレス・不安 | 対人恐怖症 |
| 無力感 | うつ病・PTSD |
| 思考の麻痺 | 統合失調症的な認知障害 |
> ※ダブルバインドは統合失調症の一因と仮説されましたが、現在は「単独原因ではない」と考えられています。
5. 対処法
被害者向け
(1)ダブルバインドに気づく
- 「この人は矛盾したメッセージを送っている」と客観視する。
- 例
- 相手に「具体的にどうしてほしいですか?」と質問し、矛盾を明確化させる。
(2)境界線(バウンダリー)を引く
- 「NO」を宣言する
- 「どちらを選んでも怒られるなら、私は自分の判断を信じます」
(3)安全な人間関係を築く
- ダブルバインドを繰り返す人とは距離を置き、「一貫性のある人」と関わる。
(4)専門家の助けを借りる
- トラウマ(C-PTSD)や対人不安が強い場合は、カウンセリングを受ける。
加害者向け
(1)硬直した教育やしつけを辞める。
- TVやメディアで言われているようなシツケや教育を画一的に人に押し付けない
- 明治の偉人伝や世界偉人伝のような話に感化されない。偉人伝などは教科書的なプロパガンダであり、その偉人も所詮半端者だと認識する。
- 自分の深層心理の不安や恐れを認識する事から始める。よって自分は人にシツケや教育できるほどの人間ではないと認める事から始める。
(2)自分の満たされない欲求を自覚する。
- 自分が叶えられなかった承認欲求を、子供にマウントする事により満たしているという自覚を持つ。
- よって自分は人にシツケや教育できるほどの人間ではないと認める事から始める。そして謙虚に子供に接する。
6. まとめ
✅ ダブルバインドは「矛盾した命令」で相手を追い詰める心理的操作。
✅ 機能不全家族・権力差のある関係で発生しやすい。
✅ 長期化すると自己肯定感の低下や精神的不調を招く。
✅ 対策は「気づき」「境界線の設定」「距離を取る」こと。
「あなたは悪くない」ダブルバインドに苦しんでいる場合、まずはその関係の不健全さに気づくことが第一歩です。
7. 追記
ダブルバインドを定義したのは、グレゴリー・ベイトソン(1904年〜1980年)という人で、アメリカ合衆国の人類学者、社会科学者、言語学者、映像人類学者、サイバネティシストです。
ベイトソンの名言
「ダブルバインドは、被害者に『このメッセージを理解できない自分が悪い』と思い込ませる」と言っています。
→真実には、教育者のように振る舞っている貴方(加害者)は所詮半端者で、人に指図できるような人間ではない。自分自身を自省しろ、という事だと思います。
殆どの人間は人に教育できるほどの人格を持っていません。それを意識するだけでも少しは違うのではと思います。
これらは自分を含め全ての人に当てはまる事なので気をつけて生きていきましょう。
当然、何も解らない子供には傷となるでしょうが、大人にとって理解するのは意外と簡単な事かと思います。基本的には認識して言動や行動を変えてゆくことかと思います。