はじめに
米国で「GENIUS法(米国ステーブルコイン法)」が上院を通過し、暗号資産業界に新たな規制枠組みが誕生しました。この法律は、ステーブルコインの発行や利用を明確に定義し、金融システムへの統合を促進するものです。しかし、その影響は単なる規制の範囲を超え、将来的には「仮想通貨技術」でユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)の役割を果たす可能性をあります。
仮想通貨の生成技術なのでユーザの特定・支給条件も組み込まれる事も可能になります。
GENIUS法がどのように資産の分配を変え、仮想通貨技術がUBIとして機能するかを妄想したいと思います。
仮想通貨エアドロップとは
近年流行っている仮想通貨のエアドロップ(Airdrop)とは、ブロックチェーンプロジェクトや取引所が、無料でトークン(仮想通貨)やNFTをユーザーに配布するマーケティング戦略のことです。主に新規プロジェクトの認知度向上やユーザー獲得を目的として現在も実施されています。仮想通貨界隈ではエアドロップの事を給付金と言ったりもしております。。
エアドロップは、特定の条件を満たすだけで仮想通貨やNFTを無料で受け取れる仕組みです。政府や自治体が行う給付金と同様に、金銭的な対価を支払わずに資産を得られるため、このような呼び方が広がりました。空から降りてくる=エアドロップ=給付金、というイメージです。
エアドロップは、プロジェクトが早期ユーザーやコミュニティメンバーに対して「感謝」や「インセンティブ」として配布するケースが多いです。例えば、以下のような理由で配られています。
- 早期利用者への報酬:プロジェクトのテストネット利用やバグ報告など、貢献したユーザーへの見返り。
- ガバナンス参加の促進:トークンを配布することで、将来的な意思決定への参加を促す(例:UniswapのUNIトークン)。
このように、エアドロップは「貢献に対する報酬」という意味合いもあり、給付金に近い性質を持っています。
以後、「エアドロップ」=「給付金」=「仮想通貨トークンでのベーシックインカム」と考えて読んで下さい。
1. GENIUS法がエアドロップに与える影響
GENIUS法の核心は、ステーブルコイン発行者に対して1:1の資産(米ドルor米国債)裏付けを義務付け、透明性を高めている事です。これにより、以下のような変化が予想されます。
信頼性の高いステーブルコインの増加
- 米ドルペッグのステーブルコイン(USDC、USDTなど)が主流になり、政府や金融機関が直接関与する可能性もあります。
エアドロップの制度化
- ステーブルコイン発行者が、ユーザー獲得やコミュニティ報酬としてエアドロップを実施するケースが増加。
- 規制下での公平な配布が可能に。
これにより、エアドロップは単なるマーケティング施策から、経済的インセンティブの一形態へと進化する可能性があります。
2. エアドロップがUBIになりえる理由
(1)「富の再分配」としてのエアドロップ
既存の金融システムでは、富の偏在が問題となっています。しかし、ブロックチェーン技術を活用した「再分配型暗号通貨」の構想も登場しており、保有量が偏ると価値が減衰する仕組みで、自然と資産が分散される設計が提案されています。
GENIUS法下では、ステーブルコインを使った定期的なエアドロップが、政府やDAO(分散型自律組織)によって実施される可能性があります。これにより、「貯めるより使う経済」が促進され、UBI的な機能を果たすでしょう。
- →例えば、エアドロップされたUSDC(ステープルコイン)は3ヶ月以内に使用する事を条件とする。3ヶ月以後は使えなくなる等の条件も設定可能です。【消費喚起型給付金】
- →受給者が65歳になったら使用できる給付金というのも可能。(後述するDefiステーキングと組合せ)【イデコ型給付金】
- →医療・通院にだけ使用できる給付金
- →食料品購入に限定される給付金
もちろん、デジタルIDとの連動により、条件付きでの給付も可能になります。様々なパターンが考えられます。
- 子供生まれたら給付。
- 年齢50歳以上のみ給付。
- 食料品限定のマネー給付金。
- 犯罪歴あるものは給付無し。
- 税金未納の者も給付無し。
- 病院に通院履歴のある者に一定の割合で給付。
- 社会活動(慈善活動)した者に一定の割合で給付。
- 右翼活動・左翼活動の疑いのある者には給付無し。(ネットやSNSでの発信)
- 宗教活動のある者には給付無し。
上記のように、良くも悪くも様々な条件付き給付金が可能となります。
(2)AI管理と自動配布の可能性
そして最近出てきたWorldcoin(WLD)のようなプロジェクトは、虹彩認証で「人間であること」を証明し、トークンを配布する仕組みを構築しています。GENIUS法がステーブルコインの利用を拡大させれば、同様の仕組みで「AIが管理するUBI」が実現する日が近いかもしれません。。
例
- 政府や企業が、ある地域に住んでいる市民に月額$100相当のステーブルコインを自動配布。
- スマートコントラクトで条件付き支給(例:教育受講者への報酬など)。
→AIが給付すると言っても、取っ掛かりのプログラムを作るのは人間です。良くも悪くも人間の思想が反映されるのは間違いありません。
(3)DeFi(分散型金融)との連動
GENIUS法は、ステーブルコインを「支払い手段」として明確に定義しています。これにより、DeFiプラットフォームと連携した利回り付きUBIの可能性も広がります。
例:
- エアドロップで受け取ったステーブルコインを、DeFiでステーキングし、利息を得る。
- これが「ベーシックインカム+α」の収入源になる。
3. 実現に向けた課題
(1)規制とプライバシーのバランス
- GENIUS法はステーブルコインの発行者に厳格なAML(マネーロンダリング防止)義務を課しています。UBIとしてのエアドロップを実施するには、個人認証と匿名性の両立が課題ですが、個人認証が必須になる事が条件となるでしょう。
(2)経済的持続性
- 無制限のエアドロップは通貨の価値低下(インフレ)を招く可能性があります。今後の法律次第でしょうが、トークノミクス(通貨経済設計)の最適化が不可欠です。
(3)普及への障壁
- 現在のエアドロップは、暗号資産ウォレットの所有が必須となっています。UBIとして機能させるには、もっとより簡単なアクセス方法(例:QRコード支給)の整備が求められるでしょう。
4. エアドロップは「デジタル生活保障」になる?
GENIUS法をきっかけに、以下のような社会変化が起こるかもしれません。
- 地方政府が地域通貨としてステーブルコインを発行し、住民に配布。
- 企業が従業員や顧客に対して、トークン報酬を支給。
- AIが経済活動を分析し、最適なUBI配布を自動化。
エアドロップがUBI化すれば、「お金が自動的に降ってくる社会」が現実になるかもしれません。
逆にデジタルIDと紐付けられると、1984のような刻印のない者は売り買い出来ないようなデストピア社会の可能性もあるでしょう。
まとめ
GENIUS法は、ステーブルコインの信頼性を高め、エアドロップを「新しい経済的インセンティブ」として進化させる可能性を秘めています。将来的には、政府や企業がブロックチェーンを活用し、「デジタルUBI」を実現するかもしれません。
そのためには附随法案、技術、経済設計においてどのような枠組みになるか今後の動向に注目です。
【参考ページ】
GENIUS法案が上院を通過 — アメリカは暗号資産の世界的な中心地になりつつあるのか?